まずは営業利益の重要性から!
皆さん、数ある利益の中で意識して見ないといけない利益は何だと思いますか?
この問いについては、各々の価値観や業種など様々な要因がありこれが正解というのはありませんが、
少なくとも私の考えは、ある程度の事業規模までは、営業利益一択。
次いで、純利益の順だと思います。
※この記事で触れている内容は、主に年商500万円~3,000万円規模の個人事業主や小規模事業者を想定しています。
中規模以上もしくは、すでに本業以外の事業が好調の事業者はこの限りではありません。
その理由は、営業利益=本業で得た売り上げから原価や販管費を差し引いて残った利益です。
つまり、営業利益が多いいということは、健全な事業スタイル・方針である可能性が高いです。
特に、同業他社と比較してさらに多ければ、ブランドとして確立できている可能性が高いです。
では、営業利益を上げるためにはどうすればいいのか?
掘り下げていきましょう。
目次
営業利益とは何か?
そもそも営業利益は、売上から事業活動に直接かかる費用(変動費)と、事業維持に必要な費用(固定費)を差し引いたものです。
以下の計算式で表されます:
営業利益 = 売上 -(変動費 + 固定費)
営業利益は、純利益と異なり本業の収益性を表す重要な指標です。税金や金利などの影響を排除し、事業の実態を明確にするため、特に個人や小規模事業者にとって、これを正しく把握することが安定経営への鍵となります。
営業利益に影響を与える要因4つ
では、営業利益に影響を与えるのは何か?
順番に見ていきます。
- 販売数量:
その名の通り、ある期間(例えば1ヶ月や1年)において販売した商品サービスの数量を指します。 - 単価:
1つの商品の価格のことです。販売価格とも呼ばれ、商品の価値を直接反映します。 - 変動費:
売上や生産量に比例して変動するコストのことです。売上が増えれば増えるほど、変動費も増加します。
商品を作るためにかかる原材料費、商品の発送にかかる送料、従業員の残業代などが変動費に当たります。 - 固定費:
売上や生産量に関わらず、一定の期間に必ず発生する費用です。売上が増えても減っても変わらずに発生するコストです。
家賃、給与、光熱費、設備のリース料などが固定費に当たります。
上記のように、営業利益を構成するのに大きく分けて4つの項目があります。
既に事業されていれば、当たり前すぎて、何を今さらかと思われますが、
そんな方に問題です。
Q,上記4項目のうち、1%の変化で営業利益に最も影響を与える項目は、どれだと思いますか?
<前提条件>
この質問における対象の事業者は、個人から小規模程度とします。
1%上げるのは売上と単価で、1%下げるのは変動費と固定費です。
その他の数値や顧客数・顧客心理は、条件を揃えるため変わらないものと仮定します。
<企業情報>
・販売数量 :1,000個
・単 価:1,000円
= 売上は、1,000個 × 1,000円で 1,000,000円(100万円)となります。
・変 動 費:売り上げの40%としてます。(販売費の性質上、販売数量に影響されます。)
・固 定 費:40万円とします。
A,上記の条件だと、単価を1%上げる。
が最も営業利益を上げるのに効果があります。
次点で、変動費≧販売数量(業種と規模により変わります。)がきて、最後に固定費となります。
では、同じ1%の変動で何が違うのでしょうか?
各1%による違い
それでは、上の条件で、各1%違う場合の結果を見ていきましょう。
①販売数量を1%増加(1,010個)
・売上 = 1,010個 × 1,000円 = 1,010,000円
・変動費 = 1,010,000円 × 40% = 404,000円
・営業利益 = 1,010,000円 -(404,000円 + 400,000円) = 206,000円
営業利益増加額:+6,000円
②単価を1%増加(1,010円/個)
・売上 = 1,000個 × 1,010円 = 1,010,000円
・変動費 = 1,000個 × 40% = 400,000円(販売数量は変わらないので変動費も400,000円)
・営業利益 = 1,010,000円 -(400,000円 + 400,000円) = 210,000円
営業利益増加額:+10,000円
③変動費を1%削減(39%)
・変動費 = 1,000,000円 × 39% = 390,000円
・営業利益 = 1,000,000円 -(390,000円 + 400,000円) = 210,000円
営業利益増加額:+10,000円
④固定費を1%削減(396,000円)
・営業利益 = 1,000,000円 -(400,000円 + 396,000円) = 204,000円
営業利益増加額:+4,000円
上記の結果から、一般的には
② 単価 ≧ ③ 変動費 > ① 販売数量 > ④ 固定費
という結果になりますが、個人~小規模事業者の場合、実効性を考慮すると、
単価の上昇が最も重要となるところは変わらず。
次に販売数量のアップが有効ということになります。
変動費削減も効果的ではありますが、規模の経済を生かしにくいため、効果が限定的です。結果として、順位は以下のように変わります。
② 単価 > ① 販売数量 ≧ ③ 変動費 > ④ 固定費
この順位は、規模が小さい事業者において、単価の引き上げや価値向上による価格改定が最も現実的で効果的だからです。
規模の経済とは?
規模の経済は、事業規模が拡大することで、製品やサービスあたりの単位コストが下がる現象を指します。
大規模な事業運営では、より多くの製品を仕入れたり生産したりすることで、1つあたりのコストを抑えることができます。
しかし、個人や小規模事業者の場合、市場規模や商圏の制限があるため、この経済効果を十分に活かすことが難しいのが現実です。例えば、商圏が狭いと、大量仕入れによる割引を受けることが難しく、その結果、仕入れ単価が高くなりがちです。
つまり、規模が小さいと、仕入れ単価や製造コストを大幅に下げることは難しく、販売数量を増やす方が現実的な利益改善策となります。
効果的な改善策とは?
では、実際に「営業利益の改善」を事業に反映させるためのアクションの一般的な改善策です。
1. 価格改定を重視する
単価を引き上げることは営業利益に大きな影響を与える施策の一つですが、単に価格を上げるだけではなく、顧客にとっての価値向上が必要です。
価格改定にあたって、顧客が「少し高くても納得できる」と感じるような価値向上が求められます。具体的には以下のような方法があります
例えば:
・商品やサービスの品質向上
・顧客が抱える課題を解決する新たな機能追加
・信頼性やブランド力の向上
ただし、顧客が求めていない価値を提供しても、営業利益は増えません。
むしろ、顧客の期待に反した場合、逆効果を招く可能性もあります。
したがって、価値向上の対象や方法については慎重に検討しましょう。
2. 販売数量アップを優先する
個人や小規模事業者の場合、規模の経済を生かすのが難しいため、販売数量を増やすことも営業利益に大きな影響を与える施策の一つです。
例えば:
・新規拡販: 新しい顧客層の獲得に向けた戦略を考える
・アップセル: 既存顧客への上位商品やサービスの提案
・ダウンセル:既存顧客への下位商品やサービスの提案
・クロスセル: 関連商品やサービスを同時に提案する
皆さんも一度はこんな提案や似たような提案を受けたことがあるかと思います。
・ご一緒にポテトはいかがですか?
・+100円で、Lサイズへ変更できますがいかがですか?
・+40円で、ポテトのフレーバー(粉)はいかがですか?
これらの提案は、知らないうちにアップセルやダウンセル、クロスセルを活用した例です。
気づかぬうちに売上を増加させるための手法として、非常に効果的です。
まとめ
営業利益は、企業の健全性や競争力を示す重要な指標です。
特に個人経営や小規模な事業者にとって、営業利益を効率よく改善するためには、単価の引き上げが最も効果的な手段だということがわかります。
実際、小規模な事業者にとっては、単価引き上げは短期的に見ても非常に現実的で効果的な方法です。
その後、販売数量を増やしたり、変動費を削減したりする方法が続きますが、固定費の削減は他の施策ほどインパクトが大きくないことがわかります。
営業利益を上げるためには、単価を引き上げる際に顧客への価値提供が不可欠です。
が、単に価格を上げるのではなく、品質やサービスを向上させ、顧客にとって明確な価値を提供することが重要です。
また、販売数量を増やすためには、アップセルやダウンセル、クロスセルといった方法を活用することで、効率よく利益を増加させることができます。
事業規模が小さいからこそ、価格改定や販売戦略をしっかりと実行することが、短期的にも長期的にも営業利益を改善するための鍵となります。このような戦略を実行する際は、常に改善を意識し、状況に応じて柔軟に調整していくことが大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。この記事が少しでも皆様の役に立てれば幸いです。